自身の過失がなくても火事の被害者になる場合も
火災保険は自身(居住者)に過失があるかを問わず、家が火事になって燃えたときは、自分が加入している火災保険で対処するのが一般的です。
法律的観点で言えば、出火原因の家に重過失があった場合は損害賠償請求できる場合もあります。
しかし、たとえ相手からの損害賠償が認められたとしても、火元になった加害者も自分の家が火事で燃えているわけで、燃え移った家の賠償金を支払う余力はなく、火災保険でもカバーできるのは見舞金程度です。
つまり、どれだけ自分自身が火の用心に気をつけていて、火事になるリスクはゼロにはなりません。
隣の家からの燃え移りや放火などの場合でも対処できるように、各住居ごとに火災保険に加入するのが世間のルールです。
燃え広がった家の損害まで保険でカバーするのが難しい理由
火災保険は自分の家の建物や家財の評価額に対して保険金を設定します。
もし、周囲の家に燃え広がった場合に、全ての損害をカバーしようとしたら保険料が大幅に高くなります。
最悪のケースでは数百世帯に火が燃え広がるケースもあり、それを火元の家の保険だけで対応した場合、保険金の上限は数十億円~数百億円になります。
そこまで幅広い範囲を保険で補償しようとすれば、保険料は数十倍になる恐れがあり、結果的に保険に加入できない家が増えて火災への補償インフラが崩壊するでしょう。
直近の事例では2016年12月の糸魚川市駅北大火では、中華料理店のコンロの消し忘れが原因で147棟が火事(全焼120棟)になり、酒造などの大規模施設も燃えて大きな損失が出ました。
また、火災保険の補償の範囲が自分の家だけになる背景には、家によって価値や耐火性能が異なることも影響しています。
自分の家がボロいのに隣の家に豪邸が建ったから、火災保険料も高くなるというのは理不尽な話です。
同様に、自分の家が耐火性能が高い家にしたのに、となりの家が古くて燃えやすい家だった場合に割引を受けられなくなる事態も起こります。
このように、自分の家以外の状況も踏まえて保険料を計算すること自体に問題が多いため、各世帯で火災保険に入って燃え広がっても、それぞれが自分の火災保険で対処する決まりになっています。
火災保険を掛ける必要がない家の条件は限られる
家の中の出火以外の火災リスクがある家は、住宅街(隣に建物が経っている)や、田舎で山火事の影響を受ける可能性がある場合などです。
家の周りが全て舗装された道路や駐車場で、一切外的要因での火災リスクがなく、なおかつ放火されるリスクもないような立地で、タバコ、暖房機器、家電、ガスなど火元になる設備の管理を徹底できるのであれば、火災保険を掛けなくてもリスクを最小限に抑えられるでしょう。
隣の家からの燃え移りや放火リスクなどを考慮すると、日本の建物の9割以上は火災保険の必要性が高い環境にあると言えます。